二重主語構文
日本語の特徴の1つに二重主語構文がある。1つの文に主語が2つあるのである。「XがYがZする」と主語が2つ可能な構文である。この二重主語構文は意味的に3つのタイプに分けることができる。
(1)
a. XがYが Zする = XにYがZする タイプ
b. 私がお金がある。
c. 私にお金がある。
(1b) は (1c) のように言ってもそれほど意味が変わらない。このタイプの述語には所有や能力を表すものや、感覚や知覚、さらに感情を表す述語が多い。つまり「XにYがZする」という関係をあらわしている。
(2)
a. XがYがZする = XのYがZする タイプ
b. 象が鼻が長い。
c. 象の鼻が長い。
(2b) はほぼ (2c) と同じような意味をあらわしている。このタイプは XとYとが全体と部分の meronomy を表していて、Xが whole で Yが Part である。こららの文はXのなんらかの性質を表す文である。
(3)
a. XがYがZする = XがYをZする タイプ
b. 子供が水が飲みたい。
c. 子供が水を飲みたい。
(3b) はほぼ (3c) と同じような意味を表している。このタイプはYが「Yを」に置き換えることができるタイプで、主に好き嫌いや願望を表す述語が使われる。さらにタイプ I と同じく可能動詞や感覚や知覚を表したり、所有や必要を表す述語が多い。
二重主語構文に似た形で主題構文がある。これは XはYがZと一見して二重主語構文のように見えるが、もともとはYがXをZするの「Xを」が主題化されて文頭に上がり「を」が削除されてかわりに主題を表す「は」がついたものである。
(4)
a. あのリンゴは太郎が食べた。
b. あのリンゴを太郎が食べた。
c. 太郎があのリンゴを食べた。
d. あのリンゴが太郎が食べた。
(4a) は(4c) が変形されたもので二重主語構文ではない。ちなみに副助詞の「は」を「が」に変えた (4d) は非文となる。